BIツールでデータドリブンな組織を作る
「データドリブンマーケティング」「データドリブンセールス」「データドリブン経営」など、“データドリブン”という言葉を見聞きする機会が増えてきました。
データドリブンとは、データに基づいた意思決定を行うことですので、それだけ、世の中に勘や経験といった属人的な要素ではなく、客観性のある根拠に基づいた判断を下したいというニーズが高まっているといえます。
現代企業において、データドリブンな組織づくりは必須の課題だといえるでしょう。そして、これを実現するために有用なのがBIツールです。
本コラムでは、データドリブンを実践するために知っておきたい知識と、データドリブンな組織作りに役立つBIツールの機能をご紹介いたします。
1.データドリブンとは?
データドリブン(Data Driven)とは「データ駆動」ともいい、得られるデータを根拠として経営やマーケティング、営業など事業における意思決定を行い、実行することを指します。
データドリブンの概念が普及する以前もデータに基づく意思決定は行われていましたが、利用できるデータの種類や量は限られており、多くの場合、最終的な判断は意思決定者の勘や経験に基づいていました。
「過去にその方法でうまくいった」という成功体験にもとづく判断は、時間の経過に伴う外的環境・内的環境の変化には対応できないため、将来的にも成功しつづけるとは限りません。
また同じ方法でうまくいった場合、それがどうしてなのか、要因を分析・特定しようという思考は働きづらくなり、正しいPDCAサイクルを回すことが難しくなります。
デジタル技術の進歩により、リアルとデジタルを横断する複雑化した顧客行動をデータで把握したり、膨大で種類の多いデータを収集・分析したりすることが可能になった今、データドリブンという手法を活用しない手はありません。
2.データドリブンを成功させるには
データドリブンには、次の四つのステップが必須です。
1. データ収集
まずは根拠となるデータを集める必要があります。データドリブン化したい事業に関わる社内の蓄積データを収集しましょう。
たとえば、マーケティングをデータドリブンにしたい場合は、見込客データや顧客データ、購買データ、Webサイトのアクセス解析データ、SNSデータ、キャンペーン施策や広告出稿時の結果、セミナーの開催結果、アンケート調査結果などを集めます。
このときCRM(顧客管理システム)やMA(マーケティングオートメーション)、Web解析ツールなど異なるシステム上にあるデータを統合する必要が出てくるため、BIツールなどを活用します。
また、このタイミングでデータが不足している場合は、POSシステムやWeb解析ツール、MA、DMP(データマネジメントプラットフォーム)などのツールを導入してデータ収集環境を整えることも検討すると良いでしょう。
2. データの可視化
データを収集したらそれを分析しやすい形に見える化します。
収集したデータを整理しグラフや画像などで表現することで、データを直感的に理解できるようになります。
誰が何の目的で見たいデータなのか、もっとも関心のあるポイントはどこなのかを念頭にデータの可視化を行うことで、データを分析しやすくします。
さらに可視化したデータから、ビジネスの課題解決に繋がりそうな示唆を読み取ります。たとえば、規則性や異常値、相関関係などを見つけます。そうした特徴が見つかったら次にアクションプランを策定しましょう。
3. アクションプランの検討
データから読み取った示唆をもとに実際に何をどう改善すれば効果が出るかを検討し、アクションプランを策定します。
たとえば、リスティング広告への出稿結果とWebサイトへのアクセス状況、成約データを分析した結果、コンバージョン(問い合わせ)の半数が社名やサービス名ではなく一般的なキーワードからの流入であり、問い合わせから成約までの期間が半年以上と長いことがわかったとします。
この場合のアクションプランの方向性としては、「リスティング広告をやめる代わりに流入に繋がりそうなキーワードでのコラム記事とお問い合わせ後の見込客が求める情報を連載し、リードナーチャリングに注力する」といったことが考えられます。
アクションプランの検討はPDCAサイクルの「P」に当たります。この後のステップで効果検証ができるよう、具体的なKPIも設定しておきましょう。
4. プランの実行
策定したアクションプランを実行し効果検証を行いましょう。
効果検証はPDCAサイクルの「C」に当たる重要なプロセスです。検証の結果、想定していた効果が出ていないことがわかればアクションプランが最適でないということも考えられます。アクションプラン検討時に立てたKPIへの達成度をチェックするだけでなく、アクションプランそのものに対する評価を行い、改善につなげていきましょう。
3.データドリブンがうまくいかない原因
ここまではデータドリブンを成功させるために積極的に行って欲しいことをご紹介しました。ここからは避けて欲しい注意点をご紹介します。
1. データを可視化していない
データは、見た目には数値の羅列なのでそのままでは理解しづらいものです。特に人には情報の多くを視覚から得るという特性があります。そこでデータから意味を見出すためには、データをグラフや散布図、ヒートマップといったビジュアルで人が理解しやすい形に表現する必要が出てきます。
収集したデータを加工する可視化のプロセスはデータ活用に向けた第一歩であり、これを行わなければデータ活用がうまくいかず、データドリブンは前進しません。
2. 具体的なデータ活用まで見据えていない
「とりあえず社内のデータをありったけ集めてBIツールを導入してみた」というように、具体的かつ明確な目的がないままにデータありきでデータドリブンを進めても成果は出にくく、データドリブンな組織づくりはうまくいきません。
経営や業務で抱える課題解決や改善のための判断の根拠として、データ活用を行うことを念頭にデータドリブンを進めることで成果に繋がります。
3. プロセスの改善が行われていない
「データの収集、データの可視化、データ分析、アクションプランの策定・実行」とデータドリブンのステップを一通り進めたら、最後に効果検証を行います。さらに効果検証を元に「データ収集~アクションプランの実行」までのプロセス改善を行って初めて、PDCAを回すことができるようになります。
プロセスが改善されなければ、非効率的だったり効果が薄かったりするままにデータ活用が行われ続けることになってしまいます。
PDCAが進行する間にも新たなデータは生まれ蓄積されていきます。プロセスを改善し根拠となるデータの量や種類を増やしつつ、データドリブンを最適化していきましょう。
4.組織づくりに役立つBIツールの機能
ボリュームも種類も多いデータを一元化して活用するのに最適なのがBI(ビジネスインテリジェンス)ツールです。
具体的にどのような機能が何に役立つかを以下でご紹介します。
1. ダッシュボード機能
ダッシュボード機能とは、データをグラフや集計表、ヒートマップなど直観的に理解しやすい形に可視化し、一画面にまとめて表示してくれる機能です。目的に応じて必要なデータを追加表示することも可能です。
ダッシュボード機能は、収集したデータを整理して法則性などの示唆を得るのに役立ちます。この機能を活用することで、データドリブンの失敗要因である「データを可視化していない」状態を回避できます。
2. データ分析機能
データ分析機能とは、OLAP分析(Online Analytical Processing/オンライン分析処理)を始めとするさまざまな分析手法を用いてデータを分析してくれる機能です。
複数の異なるデータを横断して分析でき、複雑な分析を素早く行えます。
データ分析の結果をもとに「アクションプランの検討」が行えます。
3. レポーティング機能
レポーティング機能とは、データを集計しレポートを作成してくれる機能です。
日報や週報、月報などの定型レポートを自動で出力できるほか、非定型レポートに関してもデータをドロップするだけでグラフなど希望の形式で簡単に作成が行えます。
レポーティング機能を活用することで多くのメンバーにスピーディーにデータを共有できるようになり、組織全体のデータに対する意識を高めるのに貢献します。
4. プランニング(シミュレーション)機能
プランニング(シミュレーション)機能とは、蓄積したデータから売上予測や需要予測といったさまざまなシミュレーションを行う機能です。条件を変更して複数作成したシミュレーション同士を比較することなども可能です。
シミュレーション結果やプランニング機能が導き出した計画は、来期の予算編成などをプランニングする際に役立ちます。
上記でご紹介した「アクションプランの検討」の材料として活用できます。
5. データマイニング機能
データマイニング機能とは、複数の異なるデータの中から統計学やパターン認識、人工知能(AI)などを駆使して相関性や法則性を探し出し、新たな発見を導き出す機能のことです。
目視によって人力で得られる示唆だけでなく、思いもよらなかったビジネスヒントが得られ、データに基づく「アクションプランの検討」の際に役立ちます。
4.まとめ
「データドリブン」という言葉が一種のバズワードのようにもなっている昨今、背中を押されるようにして取り組まれる企業様も増えていますが、トレンドに乗っただけの一過性な取り組みにとどめてはもったいないことです。ぜひ、これを新たな経営・業務改善に取り組むチャンスと捉え、本質的なところから押さえ、データドリブンな組織づくりを始めてみてください。
その際は、BIツールが強い味方になってくれますので、併せて導入を検討してみてはいかがでしょうか。