ブログ

コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)とは、経済産業省が2017年に提唱した概念で、主に製造業を対象とした「データを介して、機械、技術、人など様々なものがつながることで、新たな付加価値創出と社会課題の解決を目指す産業のあり方」のことです。

世界では、ドイツの「インダストリー4.0」、フランスの「未来の産業(Industrie du Futur)」、中国の「製造2025」など、第四次産業革命を起こすべく、具体的な目指す姿を描いて推進しています。これに追随しようと、日本はコネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)を世界に発信しました。

本コラムでは、コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)について、概要と取り組み事例をご紹介いたします。

1.コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)とは

コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)とは、経済産業省が2017年に提唱した概念で、主に製造業を対象とした「データを介して、機械、技術、人など様々なものがつながることで、新たな付加価値創出と社会課題の解決を目指す産業のあり方」のことです。

IoTによって「モノとモノ」をつなぐだけでなく、「人と機械やシステム」「人と技術」「(国境を越えた)企業と企業」などがつながったり協働したりすることで、新たな付加価値を創出しようというコンセプトです。

2017年3月に開催された「ドイツ情報通信見本市」に当時の安倍総理と世耕経済産業大臣などが出席するのに合わせて、日本の産業が今後、目指す姿として世界に向けて発信されました。

出典:
「Connected Industries」(経済産業省)
「Connected Industries」コンセプトムービー(経済産業省)

2.コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)の3つの柱

コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)には、次の3つの柱が設けられています。

1. 人と機械・システムが対立するのではなく、協調する新しいデジタル社会の実現

AIやロボティクスの実用化が進み、いずれは人間の仕事がこれらに取って代わられるとの不安もささやかれる中、AIやロボティクスを恐れたり敵視するのではなく、人を助けたり人の力を引き出したりして、課題解決のために積極活用しようというものです。

2.協力と協働を通じた課題解決

コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)のコンセプトは、つがなることによる付加価値の創出です。したがって、企業同士、個人と個人、法人と個人、モノと人など、さまざまなものが協力、協働することが大切であるということです。

また、コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)は、国際社会での競争力強化を目的としているのと同時に、世界の社会課題の解決も目的としており、達成のためには協力と協働が重要となります。

3.人間中心の考えを貫き、デジタル技術の進展に即した人材育成の積極推進

コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)のキーワードともなる「つなぐ」には、現在の技術を次世代の人材へつなぐ意味も含まれています。将来的に技術がさらに進歩することまで見据えた人材育成が大切になってくるでしょう。

3.コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)の5つの重点取り組み分野と事例

コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)には、5つの重点取り組み分野として「自動走行・モビリティサービス」「ものづくり・ロボティクス」「バイオ・素材」「プラント・インフラ保安」「スマート・ライフ」が挙げられています。

ここでは、『「Connected Industries」関連政策の進捗等について』と「2018年版ものづくり白書」から、各分野の取り組み事例とともにご紹介します。

1. 自動走行・モビリティサービス

「自動走行・モビリティサービス」が重点取り組み分野として選ばれたのは、世界を牽引してきた日本の高品質で安全な自動車づくりをベースに、主に自動走行分野で世界をリードするため。現状で不足している「データ利活用」「AIシステム開発」「人材育成」について検討を進めています。

自動走行・モビリティサービスの取り組み先進事例

2012年に、日本の自動車や航空機の業界などの若手メンバーを中心に空飛ぶクルマ「SkyDrive」の技術開発と事業開発に取り組む有志団体「CARTIVATOR」を発足。2018年に株式会社SkyDriveを設立し、CARTIVATORと共同開発を行っています。

株式会社SkyDriveは、空飛ぶクルマと物流ドローンの開発・製造・販売・運航サービス、物流ドローンの開発・製造・運用サービス・コンサルティングを手がけています。
2020年には、空飛ぶクルマ”SkyDrive”の有人デモフライトと、カーゴドローン販売を実現。誰もが自由に空を飛べる時代の実現を目指し、官民協業で取り組みを進めています。

株式会社SkyDrive

2. ものづくり・ロボティクス

戦後の経済成長を支えた日本の製造業ですが、付加価値が「モノ」から「ソリューション」へと移行していること、少子高齢化による人手不足で人材確保が困難になっていきていることが業界の課題となっています。

そこで日本の製造業の強みである「現場の良質かつ豊富なリアルデータ」を活かし最大化するために、民間企業のプラットフォームをつなげ、データの利活用を最大化する仕組みづくりについて検討を進めています。

ものづくり・ロボティクスの取り組み先進事例

ロボティクスの企画・開発、実証実験・実用化、市場開拓までをトータルに提供する株式会社hapi-robo st(ハピロボ)では、GMOクラウド株式会社、ハウステンボス株式会社と共同で、IoT技術を活用し、リモートでゴミの量を把握できる「スマートゴミ箱」の実証実験を行いました。

内蔵されているセンサーで、各ゴミ箱とスマートフォンやタブレットのアプリケーションがつながり、リアルタイムにゴミの量を確認できるといいます。一定量のゴミが溜まるとスタッフがゴミ収集を行うという流れで、ゴミ収集業務の効率化を図るというものです。

株式会社hapi-robo st

3. バイオ・素材

バイオ分野の基盤技術は欧米が先行していること、欧米を含めコストに見合うバリューを提供できていないという現状の課題から、非医療分野において、バイオとデジタルの融合によるイノベーションの創出と、産業界が届けるべきバリューの検討を進めるとして重点分野になっています。

バイオ・素材の取り組み先進事例

マイクロ波化学株式会社では、マイクロ波を活用した製造プロセスに、化学反応・触媒化学・プラントエンジニアリング・製造システムといった基盤技術と、これを支える物理・化学・エンジニアリングの専門性を有する研究開発人材、マイクロ波に特化した開発インフラを組み合わせて「技術ソリューション」として顧客へ提供しています。

新素材の実用化を目指す大手化学メーカーと提携して基礎研究から応用開発、実証開発まで伴走。研究開発段階では共同開発費用を、実用化後はライセンスフィーを受け取るビジネスモデルを構築しています。

マイクロ波化学株式会社

4. プラント・インフラ保安

日本のプラント・インフラにおいては、設備の高経年化、ベテラン人材の引退、新技術の活用ができていないという3つの課題を抱えています。そこで、石油精製・石油化学業界のデータ共有にかかる共通の課題解決や、各IoT技術実証事業の成果を共有と課題の抽出、新たな知見の共有を目的とした議論が進められています。

プラント・インフラ保安の取り組み先進事例

電気事業連合会が2021年3月に発表した「電力業界におけるスマート保安 アクションプランについて」によれば、インフラ保安の高度化・効率化のため、制御システム・通信技術の高度化に伴う電気所監視制御体制の効率化や、設備の劣化データ蓄積・分析による劣化診断技術の開発、センサー設置による設備故障の予兆管理技術の開発などに取り組み、停電時間の低減に成功しています。

さらなる保安の高度化・効率化に向けて、ドローン・AI・ビックデータ分析などの新たな技術開発を展開しているといいます。

電気事業連合会

5. スマート・ライフ

日本における少子高齢化問題と、そこから派生する就労人口の減少という2つの課題に対し、高精度センサーの付いた家電やウェアラブル機器などを活用した「スマート・ライフ」で解消しようと検討が進められています。

スマート・ライフの取り組み先進事例

株式会社NTTドコモと横浜市、and factory株式会社は、相鉄グループや富士通コネクテッドテクノロジーズ株)などと協力して、「デバイスWebAPI(国際標準)」を用いてIoT家電やセンサーなどを実装した「IoT スマートホーム」の実証実験を実施しました。

実際の生活ログを蓄積・解析することで、居住者の生活状態や快適さについて評価・検討を行う狙いがあります。

まとめ

政府が推進しているコネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)についてご紹介しました。

「コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)の5つの重点取り組み分野と事例」でご紹介した『「Connected Industries」関連政策の進捗等について』では、各分野における課題と日本の強みを踏まえて方針が示されています。

同様に、自社の課題と強みを明らかにすることで、自社のものづくりにおいて抱える課題を解決する糸口が見えてくるでしょう。少し視点を変え、「つなぐ」というキーワードで捉え直してみてはいかがでしょうか。

資料ダウンロードお問い合わせ
資料ダウンロードお問い合わせ