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「ビッグデータ」という言葉の浸透に遅れて「BIツール」も耳目にする機会が増えてきました。

BIとは、Business Intelligence(ビジネス・インテリジェンス)の略で、企業内に蓄積されたデータを集約して示唆を得、経営上の意思決定に活用することを指しますが、BIツールを使うと具体的に何ができるのか疑問を抱えている方も多いかもしれません。

本コラムでは、BIツールの導入の流れとBIツールでできることを活用事例から紹介します。

1.BIツール導入の流れ

BIツール導入の流れは、一般的なシステム導入の流れと同様で、「要件定義、設計、構築、テスト、データ移行」となります。

その前段階として、BIツールを活用して知りたいこと、分析したい内容を明らかにしておく必要があります。BIツールの導入は、あくまでも「手段」であり、目的ではないので、そこがすり替わってしまわないよう、導入によって叶えたいことを明確にしておきましょう。

経営層を始め、現場部門や情報システム部門などさまざまな立場のユーザーから希望を挙げてもらうことからスタートすると良いでしょう。

1. 要件定義

BIツール導入で最初のステップとなる要件定義では、準備段階で明かにした導入目的をもとに求める機能を整理します。

見たいデータの種類や組み合わせから、分析の切り口(ディメンション)を決めましょう。たとえば、売上を分析するなら「月別」「地域別」「カテゴリ別」「商品別」といった切り口が考えられます。

さらに、準備段階で明確にした導入目的を実現するために必要となるデータ(対象データ)を洗い出し、データを保持している部門へのヒアリングなどからデータ品質を確認します。

2. 設計

要件定義を元に、BIツール上でテーブル(データ要素の集合を垂直な列と水平の行のモデルで構成したもの)の作成やインターフェースのデザインなどを行います。また、データの取得方法も定義します。

ここでは、BIツールで出力したいデータの項目や形式があります。集計結果・分析データの出力項目・形式を検討しましょう。

3. 構築

設計した内容で実際にシステムを実装していくフェーズです。
具体的には、データ格納用のサーバなどのインフラ整備、BIで分析するデータの整備(重複や歯抜けなどの解消)、演算処理の設定、分析結果を表示する画面定義などを行います。

4. テスト

テスト稼働を行い、問題点が見つかれば、ベンダーに修正を依頼しましょう。

5. データ移行

テストで問題がなければ、本稼働に向けて対象データをBIツールへ移行します。
本稼働に向けて、ほかにはユーザーへのトレーニングなどが必要となります。

2. 活用事例 ~BIツールでできること~

上記のような流れでBIツールを導入したら、実際にどんなことが可能になるのでしょうか?
ここでは、代表的なBIツールの活用事例をケーススタディでご紹介します。

【事例1】データの集計・分析にかかる時間を圧縮し、スピーディな意思決定を行う

経営層を始めとするあらゆる部門において意思決定をスピーディに行えれば、競合他社に対して高い優位性が保てるでしょう。BIツールを活用すれば、それが実現できます。

・経営会議において使用するデータを、基幹システムから手作業で取得し、Excelで加工・分析していたが、グループ企業全体、また、顧客グループのデータをまとめるのに時間がかかり、数ヵ月前のデータで資料を作成するしかなかった。また、手間がかかるためミスも起きていた。
BIツールの導入により、経営戦略立案のための状況把握がスピーディに行えるようになり、より迅速な意思決定が可能になった。また、同じデータを異なる切り口から見ることも容易になった。

・マーケティング会議に提出するデータの種類がさまざまで、これをまとめる作業に時間が取られていた。
BIツールの導入により、キャンペーン施策に関するデータ、オフラインでの広告出稿に関するデータ、Webマーケティング関連データ、商品売上データなどを一元管理し、可視化できるようになり、会議資料作成時間の短縮だけでなく、マーケティング部門のメンバーや経営層が見たいときにいつでも確認できるようになった。

【事例2】需要予測の算出で在庫やスタッフの過不足を解消

小売業界ではPOSデータの活用により、売れた商品の品名や数、金額などを把握できるようになりました。ECデータも加えれば、リピート率やLTV(顧客生涯価値)なども算出できます。
BIツールの導入で、こうした過去の膨大なデータをもとに需要予測を立てることが可能になります。

・衣料品小売業を営む企業でBIツールを導入。過去の販売データや気象データから需要予測を行い、欠品の恐れがある店舗を事前に察知。店舗間で在庫を移動させ、欠品による機会損失や在庫過多を回避できるようになった。

同様に、サービス業などでは需要予測から接客に必要なスタッフ数を割り出し、必要十分な人数を配置させることが可能になります。

【事例3】製造ラインにおける不良原因の分析、生産実績データのリアルタイム共有

製造業の生産管理でのBIツール活用事例です。

・生産ラインで一定比率で生まれてしまう不良品は、製造部門としてはゼロにしたいもの。そこでBIツールを導入し、生産ラインの稼働状況データと品質管理データを比較し、相関性を調べることで原因を探り、不良品削減につなげた。

・生産実績データを管理者のほか、製造現場のスタッフ全員に共有するために、紙にプリントアウトして張り出していたが、時間や工数がかかっており、リアルタイム性にも欠けていた。BIツールとデジタルサイネージの導入で、ダッシュボードをリアルタイムに現場共有できるようになった。

【事例4】会員制店舗の利用率と継続率から退会を回避

フィットネスクラブやエステティックサロン、会員制スーパーなど、会員制でサービスや商品を提供するスタイルのビジネスを展開する企業では、会員の継続率と利用率を上げ、顧客一人ひとりのLTVの最大化を図ることが命題となってきます。

・会員制フィットネスクラブを経営している企業で、退会者の低減が課題となっていた。そこでBIツールを導入し、継続率や利用率と退会率の相関性、月別の退会率などを分析して、タイミングを計り利用を促すDM(ダイレクトメール)でリテンションをかけ、退会率を縮小した。

まとめ

ご紹介してきたように、BIツールを導入することで、さまざまな分析や予測が可能となり、経営や事業において新たに採用できる手法の幅を広げてくれるでしょう。

ただ、BIツールは万能ではなく魔法の箱でもありません。やみくもに導入しても費用が無駄になってしまいます。BIツールはよく、素材(データ)を活かして隠れた風味を引き出すなどしておいしい料理に仕上げるための調理器具に例えられます。

導入に当たっては、目的や用途を明確化すべきといえます。

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