製造業でIoTを導入するメリットとポイント
1.そもそもIoTとは?
IoTとは、Internet of Thingsの頭文字を取ったもので、日本語に訳すと「モノのインターネット」となります。さまざまなモノがインターネットでつながり、モノ同士のネットワークが構築された状態です。モノ同士がインターネットを介して情報交換し、制御し合う点にメリットがあります。
近年、政府が提唱する「ソサエティ(Society)5.0」や、経済産業省が推進する「コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)」などによって注目を集めています。
2.製造業でIoTを導入するメリット
日本が「ソサエティ(Society)5.0」や「コネクテッド インダストリーズ(Connected Industries)」を推進するように、海外でも主要国が未来に向けて具体的なビジョンを描いています。ドイツの「インダストリー(Indutry)4.0」やフランスの「未来の産業(Industrie du Futur)」などがそうです。
特に、インダストリー4.0においては、「スマートファクトリー(つながる工場)」を目指すもので、製造業のIoT化とも言い換えられます。
では、製造業でIoTを導入することで、どんなメリットが得られるのでしょうか?
1. 品質を維持できる
製造現場で製品にRFIDなどを取り付けてデータを取得し、あらかじめ設定されている品質基準と照らし合わせて逸脱した場合にいち早く修正することで、品質の維持につなげることができます。
2. 設備の予知保全ができる
工場設備にセンサーを取り付けて常に監視を行うことで設備の劣化状況を把握し、劣化箇所の部品交換や修理を行うことで、設備停止による損失を回避したり、予防保全※によって発生する無駄な部品やメンテナンス人員の削減を実現します。
※予防保全…定期的に部品交換などのメンテナンスを行う保全方法。
3. 生産ラインの最適化ができる
生産ラインでは、ラインを流れるワークや製品、トレイなどにセンサーを取り付けて、これらの滞留や不足を把握したり、作業者の位置情報などを同様にセンサーから得ることで生産ラインを最適化し、生産性の向上につなげることができます。
4. 熟練者の技術を伝承できる
カメラセンサで熟練者の動きや視線をモニタリングし、最適な動きを形式知化したり、スマートグラスなどを活用して実際の作業中に熟練者の視点を初心者へ共有したり、逆に作業中の初心者へ熟練者がアドバイスを送ったりすることで、熟練者の技術を伝承できます。
3.製造業でIoTを導入する際の課題
上記のように、製造業でIoTを導入するメリットは多いですが、導入に当たり、以下のような課題を解消する必要があります。
1. コストがかかる
IoTを導入するには設備投資が必要です。
センサーや、センサーから集めた電気信号を変換するためのアクチュエータ、サーバの増強、また、電力やネットワークへの負荷もかかるため、それらも増強する必要がありますし、IoT用のシステムの構築・運用・保守にもコストがかかります。
2. IoT人材の確保
IoT導入に伴い、システムやデータ分析などを行える人材を確保する必要があります。
センサーやカメラなどのIoTデバイスやネットワークに精通していて、デバイスを操作するためのアプリケーションに関する知識があり、必要があれば作ることもできるスキル、さらにどのようなデータを集めるべきか、集めたデータをどのように分析・活用すべきか方針を示し、実際にデータを扱えるといった高度なスキルを持つ人材は不足しており、確保が困難です。
3. セキュリティ対策
IoT導入により、社内ネットワークへ接続するデバイスが増加することから、セキュリティリスクも増大します。不正アクセスや内部不正によるマルウェア感染、情報漏えいなどかシステムやデータを守り、正常に稼働させるためのセキュリティ対策を講じなければなりません。
4.製造業でIoTを活用するためのポイント
IoT導入前に知っておきたい、製造業でIoTを活用するためのポイントは次の3点です。
1. IoTで解決したい課題を明確にする
「製造業でIoTを導入するメリット」でご紹介したように製造業でIoTを導入するメリットは大きいですが、もちろん、ただIoTを導入すれば良いというものではありません。導入する目的を明確にしておくことで、収集すべきデータの方向性も定まりますし、無駄な設備投資をせずに済みます。
まずは自社が工場などで抱える課題を明らかにし、そのうちどの課題に対してIoTで解決を図るのかを決めてから検討を進めましょう。
2. トライ&エラーを前提に、スモールスタートする
「製造業でIoTを導入する際の課題」でお伝えしたように、IoTの導入にはコストがかかります。前項でお伝えしたように目的を明らかにしたら、まずは簡単なプロトタイプでIoTの導入効果が見込めるかどうかを検証し、成功すればスケールし、失敗したら次の方法を試すという具合にトライ&エラーを前提にスモールスタートすることで、無駄なコストを抑えながら効果的な導入がかなうでしょう。
3. 製品のIoT化にも目を向けてみる
ここまで、製造業の中でも主に工場など生産の現場でのIoT活用を話題にしてきましたが、製造業におけるIoT活用にはもう一つ、製品をIoTデバイス化するという方法があります。
つまり、IoT製品を提供し、ユーザーがインターネット経由で中のシステムをアップデートするというものです。
IoTの製品開発には、すべての開発フェーズを手がけられるフルスタックのエンジニアが必要だといわれており、人材確保の難易度はさらに上がります。
ただ、今後、通信速度のさらなる高速化や次世代のモバイルが登場する可能性は高く、IoT製品はますます身近なものとなるはずです。
先を見越して製品のIoT化に取り組んでおくことでノウハウを蓄積し、競争力を高めるというのも戦略の一つではないでしょうか。
5.まとめ
製造業でIoTを導入することで、生産性向上や品質の維持、熟練者の技術継承などを実現することができます。
まだIoT導入に踏み切れていない企業は、この機会にぜひ検討を進めてみてください。
ただ、上でご紹介したように、導入に当たり、解消しておくべき課題もあります。
データ活用に関しては、当社もお手伝いできることがあるかと思いますので、ぜひお気軽にご相談ください。